2016年3月6日の「日本経済新聞の電子版」の記事をベースに紹介します。
政府は、外国人の就農を「国家戦略特区」の指定を受けている「新潟市」「京都府」「愛知県」の3ヶ所で解禁する方向で検討を進めています。
現在日本の産業界では一部の職種(銀行など)を除いて人手不足になっています。
その対策として、人工知能(AI)や自動化、情報通信技術(ICT)の活用などにより、仕事の効率化を進める一方、人材としては「女性」「高齢者」「外国人」の活用が言われています。
女性、高齢者に関しては限界があり、外国人の活用が最も注目されています。
技能実習生制度と違う形態
今回、導入が進められています「農業分野での受入」は従来の技能実習生制度とは異なっています。
① 受入人材
「満18歳以上で、1年以上の実務経験がある専門人材、農業に従事するうえで必要な日本語が話せること」が示されています。
② 働ける期間
就労できる期間は「通算で3年」。
例えば日本で農業に従事する期間が毎年6ヶ月なら、残りの期間は母国に戻って母国で働いてもらって、6年間にわたって日本と母国を行き来することもできます。
技能実習の場合は、実習期間(3年)の間は特別な事由がない限り母国に帰ることはありません。
③ 実施の業務
直接的な農作業以外に、加工や販売に携わったり、複数の生産法人で働いたりすることもできます。
④ 報酬
日本人労働者と同等以上の報酬支払いを義務付けています。
年間総労働時間の上限を設け過重労働を防ぐことになっています。
他の地域への展開
今回認められたのは、国家戦略特区の指定を受けている自治体に限定されていますが、農業の人手は全国的に不足していますので、他の自治体も関心を示しています。
現時点では、実施するには特区の指定を受ける必要がありますが、特区の追加指定の作業が停滞しているとのことです。
農業以外の動き
農業以外にも「特区制度」を利用した外国人の受入の緩和策が検討されています。
東京都や神奈川県などに続き「愛知県」でも外国人による「家事代行サービス」が解禁されます。
これは、「家事の負担を減らし、女性の就労を後押しする目的で、中高所得層の共働き世帯や在留外国人の利用を見込んでいます。
新潟市は、理美容やアニメ・漫画といったクールジャパン人材、ホテルの接客人員の受入も検討しています。
今後の外国人の受入の動き
これまでの政府の方針は「優秀な外国人(優れた経営手腕を持つ、高度な技術力を持つ)」は積極的に受け入れるが、現場の作業員などは「技能実習生」や今回紹介した「特区制度」を利用した限定的な受入で対応してきました。
ただし、政府が描いている姿と産業界の現実とは乖離が生じています。
特区制度のような限定的な(小手先の)対応ではなく、「外国人の受入」に関して、系統立った制度の構築が必要になってきています。
「介護の技能実習」や「介護ビザ」に関しても、使いやすい制度ではないため、各関係者が様子見をしていて普及していないのが現状です。
労働人口の減少のスピードと体制整備のスピード、どちらが早いか、待ったなしの状況に追い込まれつつあります。
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