「在留外国人」と「新型コロナ」(1)技能実習

代表者ブログ

テレビや新聞などのマスコミではあまり取り上げられていませんが、日本に在留する外国人に対して「新型コロナウィルス感染拡大」は大きく深刻な影響を与えています。

今後、この問題について、最新情報を交えながら紹介していきます。

今回は「技能実習」に関して報告します。

 

<技能実習生の3つの課題>

1 技能実習生が来日できない

2 コロナの影響で生産縮小・人員調整で解雇

3 技能実習が終了しても母国に帰れない

 

技能実習生に支えられた日本の生活

技能実習制度は名称や制度が変更されながら約30年継続し、現在は約41万人(2019年末)の方が日本で働き(実習)、生活しています。

農業漁業では、技能実習生がいなければ成り立たないところもあります。

1980年代は「漁業大国」として世界一の漁獲量を誇った日本ですが、高齢者の引退や後継者不足で廃業する漁船が増え、就業者は約15万人と当時の3分の1になっています。残った漁船・漁師にとっても人手の確保が重要課題で、日本人は集まらないので、技能実習生に頼るところが増えてきています。高知県のある漁船では、乗組員9人のうち、5人がインドネシア人です(インドネシアの水産高校を卒業)(日本経済新聞2020年5月6日の記事から)。

群馬県北部の昭和村では、地元のJAが監理団体となり技能実習生を各農家が受け入れています(日本経済新聞2020年5月9日の記事から)。また、九州でも農業が盛んな熊本県、福岡県南部は多くの技能実習生を受け入れています。

製造業建設業でも、現場作業員として多くの技能実習生を受入れ、生産や工事ではなくてはならない存在になっています。ある自動車部品製造の会社の総務課長は「日本人の派遣社員は直ぐに辞めてしまうが、技能実習生は3年は確実に働いてもらえるので、人員計画がたてやすい」とのことです。

また、高齢化により需要が高まっている介護業でも、大手を中心に技能実習生の採用が進んでいます。

<技能実習の仕組み>

企業や個人事業主は、「監理団体」を通じて、技能実習生を受入れます。

 

新型コロナウィルスの感染拡大の影響

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、大きく3つの問題が発生しています。

 

1 技能実習生が来日できない

3月下旬から、観光目的だけでなく、技能実習生の入国も止まっています。昨年は毎月1万人から2万人の実習生が来日していて、このまま半年間継続すると約10万人1年継続すると約20万人の働き手が来日できないことになります。

先の群馬県の農家でも野菜の収穫の人手が足りなく数百万円の売上が消失するとのこと、また、先の漁船でも1名の採用を予定していたが来日できない状態が続いています。

また、本格的に技能実習生の受入が始まってきた介護施設も大きな影響がでています。

受入を予定していた企業、農家、漁師などでは、人員補充ができなくて、規模縮小(生産量の低下)を余儀なくされているところもあります。

 

2 コロナの影響で生産縮小・人員調整による解雇

製造業や建設業では、生産量の減少や工事の先送りなどの面で業績が悪化し、技能実習生を解雇するところが増えてきています。通常では、雇うことができなくなった技能実習生は、「監理団体」が同じ業種の企業を紹介しますが、今回は業種全体が不況になっていますので紹介するところがない状況です。

宿泊や一部の食品製造でも同じことが起こっています。

現在の制度では、実習生は違う業種の仕事をすることは認められていないので、先の人手不足の業種で実習を行うことはできません(緩和策については後述)。

 

3 技能実習が終了しても母国に帰れない

各対象国の入国制限の影響で、技能実習の期間が終了しても母国に帰れない方が増えています。この場合の対応として次の2つの場合があります。

継続して働ける場合:在留資格を「技能実習」から「特定活動」に変更して同じ企業で継続して働き、手当ももらうことができます。

働けない場合:在留資格が「短期滞在(90日)」に変更になります。この場合、今の制度では、働くことができません。帰国もできず、働くこともできず、場合によっては住み家も追い出され、不安な日々を過ごすことになります。

 

 

日本政府の対応

 

専門家(外国人労働者の問題に詳しい指宿昭一弁護士)から次の指摘があります。

「政府は、外国人技能実習生の制度は国際貢献が目的であると説明しているのだから、実習生が不利益を受けることがないように、政府は企業側に帰国できない実習生を継続して雇用するように指導するか、責任をもって代わりの仕事を世話する必要がある。」

政府として、2020年4月20日に、「解雇された実習生の異業種への転換」を特例として認めることを公表しました。このため、製造業で解雇された実習生が農業に従事することも可能になります。

ただし、実習生が自ら新たな受入れ先を見つけるのは難しく、政府や自治体による転職先の仲介などの支援が不可欠です。出入国在留管理庁は、就労を希望する外国人の申請をとりまとめ、自治体や業界団体を通じて事業者に情報を提供、マッチングを行うことにしましたので、これが機能することを期待します。

韓国では外国人労働者と受入れ企業の仲介は政府機関が手掛けていて、やむを得ない理由で受入れ先を変更する場合にも、政府機関が新たな職場を紹介する制度になっています。

 

「技能実習制度」は、この「新型コロナウィルス感染拡大」の影響により、関係する機関、外国の「送出し機関」日本の受入れ機関である「監理団体」そして実施に使用する「企業や個人事業主」の状況に大きな変化が生じています。

場合によっては、個別の機関だけでなく、外国政府も含めた制度全体の見直しが必要になる可能性があります。

一時的に生産活動など経済が停滞しても人手不足は続き、その中で「外国人材」の力が必要になります。「安定的に労働力を確保する」という観点で、今後の状況と政府の対応を注視していく必要があります。

 

次回は、「留学生」のコロナの影響を紹介します。

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