西日本ファイナンシャルホールディングスの「(株)NCBリサーチ&コンサルティング」が毎月発行している会報「飛翔」の5月号に、2019年10月末時点の厚生労働省のまとめをベースにした「九州の外国人の就労状況」が取り上げられていましたので主な点を紹介します。
*寄稿者:公益財団法人九州経済調査協会・調査研究部・調査役・佐藤和輝氏
寄稿記事を基に、他の情報や個人的な見解を加えています。
なお、「新型コロナウィルス感染拡大」により、外国人の就労状況は大きく変わっており、現在の姿ではありませんが、影響が出る前の傾向として見て下さい。
5年で「2.4倍」に増加
2019年の九州地域の外国人労働者数は、「前年比15.6%増」となる「115,890人」で5年前(2014年)との比較では「2.4倍」に増加しています。
外国人労働者には、身分系(「永住者」、「日本人の配偶者」)、高度人材(「技術・人文知識・国際業務」)、技能実習、留学(資格外活動:アルバイト)などが含まれます。
県別では、福岡県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県の増加が大きく、九州地域全体でも全国よりも増加率が高く、それに伴い全国に占めるシェアも「6.1%」から「7.0%」に増加しています。
各県の増加要因は次のように異なります。
福岡県:留学生の増加、製造業・建設業の技能実習生の増加
熊本県・宮崎県・鹿児島県:農業を中心とした技能実習生の増加
沖縄県:留学生の増加(特にネパール)、リゾートホテル関係の技能実習生や高度人材
*南九州(熊本・宮﨑・鹿児島)の農家では人手不足により、技能実習生によって成り立っているところも多くあります。
各県の国籍別労働者
九州地域の各県の外国人労働者の出身国籍を示します。
九州地域では、全国との違いとして、「ベトナム」「ネパール」からが多いことが挙げられます。
ベトナムは「留学生」と「技能実習生」の増加、ネパールは「留学生」の増加が要因です。
今後の動向
1 「新型コロナウィルス感染拡大」の影響
宿泊業や製造業に従事する外国人労働者が解雇になっているとの情報があり、一方、農業では、予定していた技能実習生が来日できなくて、植え付けで忙しい時期に人手不足で困っているところもあり、影響が拡大しています。
また、飲食店の休業により「留学生のアルバイト」が減り、学費を工面できないという問題も生じています。
「コロナ」での外国人労働者の扱いは、国ごとで対応が異なり、日本国内でも業種・会社毎に対応が異なっています。日本人を優先、正規社員を優先、それにより真っ先に犠牲になるのが外国人労働者です。
政府の給付金等の対応は、「在留外国人は日本人と同じ扱い」を基本としていますが、留学生への給付金の支給には外国人留学生対象の成績要件などを加えています。
国際的な往来が元に戻った際に、これまで好意的に日本に来た外国人が、今回の日本のコロナ対応を感じ、また日本に来てくれるのか、非常に考えさせられるところです。
実際、この「コロナ」の影響が出る前から、世界的な人材獲得競争が生じていて、日本での外国人労働者の労働環境や処遇の面で、日本は競合国に対して劣勢になっている面もあります。
2 産業構造の変化・生産性の向上
日本は「生産性が悪く、国際的な競争力が低い」とされています。
その原因として、他国に比べて「企業や個人のIT技術の取り込みの遅れ」「行政面の過度な制約」などが挙げられています。
少子高齢化による「経営者の高齢化による事業承継問題」「人手不足による事業継続問題」は以前から大きな問題になっています。
また、今回の「コロナ」問題で、「マスク・消毒液、食料、工業用の原材料、主要部品など」の海外依存が高いことによる問題も指摘されています。
これらの問題は、対策の取組みが緩やかでしたが、今回の「コロナ」の影響で対応が加速されることが予測されます。
その中で、日本社会および各企業が、外国人労働者をどう受入れ、「共存・共生」していくのか、国だけに任せるのではなく、各企業レベルでの取組みが必要です。
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