技能実習生に依存する日本の労働力
2020年は、「新型コロナウィルス感染拡大」の影響により、新規に日本に来る外国人労働者は大幅に減少しましたが、一方、逆に在留期間(契約期間)が切れても母国に帰れない方もいて、在留の外国人労働者数はわずかな減少に留まっています。
出入国在留管理庁がまとめた6月末の状況を次に示します。
・在留外国人数:288万人(2019年末から1.6%減少)
・技能実習生:402,422人(2019年末から2.1%減少)
11月から、ベトナムを中心に止まっていた技能実習生の来日が再開されていますので増加に転じる可能性があります。
昨年(2019年10月末時点)の日本で働いている外国人の状況を示します。
全体では、前年に対して「13.6%」の増加、技能実習生は「24.5%」と他の在留資格と比べて増加率が高くなっています。
2019年4月に、現場作業者向けの在留資格「特定技能」の運用が始まりましたが、この制度は「技能実習制度の上に成り立っている」こともあり、今後も技能実習生を雇い入れる企業は増えていくと思われます。
外国人雇用状況(2019年10月末) 厚生労働省ホームページ
技能実習制度に関して海外から批判に対応
技能実習制度に関しては、海外から「人権侵害」の面で厳しい目が向けられています。
アメリカ国務省は2020年6月、各国の人身売買に関する報告書で、日本を3年ぶりに格下げしています。
「人権侵害」の面で、大手企業を中心に、自社や系列会社、主要取引先の技能実習生の実態調査・改善に取り組む動きが出てきました。
<トヨタ自動車の場合>
・移民労働者に適正な労働条件を保証すると掲げ、2019年にグループ会社や国内外の主要仕入先の雇用実態を初めて調査
・国内に「技能実習生:9,100人」いると確認
・仕入先を集めて人権に関する勉強会を開催
・実習生が来日に際して多額の借金をしていないかを調べた
・新型コロナウィルスでは帰国困難な実習生の雇用を確保するよう呼びかけた
<国際協力機構(JICA)の取組み>
・企業や業界団体、労働組合、弁護士などが外国人労働者の問題解決に向けて連携するための任意団体「責任ある外国人労働者受入れプラットホーム」を設立
・外国人にアプリなどで日本で快適に働くための情報を提供
・実態調査を踏まえて国内外の行政機関などに解決策を提案
・海外に向けて日本の取組みをアピール
*トヨタ、三起商行、アシックス、住友電気工業、味の素なども賛同
2019年の主な事項別違反事業場数
厚生労働省がまとめた違反の状況を示します。
「実習」という名目で、長時間にわたり、安い賃金で働かせていることが覗えます。
この違反の事業場は、大企業よりも中小・零細企業が多いと思われます。中小・零細企業の場合、経営者自体が法律に触れていることを理解できていない場合もあり得ます。
先のように大企業が関連する取引先の実態調査を行う可能性があり、技能実習生に対して不当な扱いをしていることが発覚した場合に取引停止になる可能性もあります。
技能実習の法律違反の状況 厚生労働省ホームページ
(株)ビザアシストは(株)AEMと連携して、2020年6月に「アシスト国際事業協同組合」を設立し、11月に外国人技能実習機構から技能実習の「監理団体」の許可を受けました。
これにより、技能実習生を受入れ、各企業に配属し、支援することが可能になりました。
現在、体制の整備を行っていて、2021年から本格的に技能実習生の受入れ業務を行います。
※本記事は、2020年11月23日の日本経済新聞の記事を参考にしています
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