2021年7月17日の日本経済新聞の記事などから「技能実習」の現状について紹介します。
会計検査院の報告
会計検査院は7月16日、許可法人『外国人技能実習機構』による実習生失踪の実地検査が滞っているとの報告書を公表しました。
なお、今回は外国人関係で「参議院」からの要請を受けて次の3点を調査し報告しています。
(1)大学等への外国人留学生受入れに係る施策の状況
(2)技能実習制度の適正化に係る取組みの状況
(3)外国人材の受入れに係る国の支援の状況
会計検査院のホームページに掲載されている図を示します。
外国人技能実習機構は2017年、技能実習生の保護などを目的とする技能実習法に基づき設立されました。法務省と厚生労働省の所管の下、実習生が失踪した際に実習先企業の問題の有無を実地検査する役割も負っています。上図のように、「3,639件」の事案の内、「755件(約20%)」は実地検査をしていなかったとのことです。指摘を受けた機構は、「失踪件数が膨大なため検査できなかった」とした上で「迅速な検査を徹底する」としています。
出入国管理庁は2019年に「失踪の起きた実習先を機構が速やかに実地検査し、企業側に責任があれば実習生の受入れを停止する」方針を打ち出しました。新たな失踪を防ぐのが狙いですが、処分の前提となる検査が滞れば対策の実効性は薄れます。
出入国在留管理庁によると2020年の失踪件数は「約5,800件」で前年よりも3割減っています。しかし、新型コロナウィルスの影響で雇用情勢が悪化し、転職先を見つけることが困難になったことなどの影響が大きいとみられ、コロナ収束後に再び増える可能性があります。
失踪の原因としてお金の問題
技能実習生の失踪につながる事情としては、来日の際に実習生が本国の送出し機関に支払う高額手数料の存在が度々指摘されています。
最大の送出し国であるベトナムの場合、手数料の上限を3年間の実習で「3,600ドル(約40万円)」と定めていますが、ベトナム政府は3月に「1人当たり7,000~8,000ドル」が支払われていると実態を報告しています。この金額は以前に比べれば少なくなっていますが、実習生にとっては大きな負担になります。
技能実習制度を巡っては、アメリカ国務省も世界各国の人身売買に関する年次報告書で批判しています。7月1日に発表した2021年版でも「借金に基づく強制労働」が行われていると指摘しています。海外の送出し機関が実習生から過度の手数料を徴収しているのが要因とし、受入れ側の日本政府と送政府による政府による取組みが不十分だと述べています。
技能実習制度は変わるのか?
2019年4月に「特定技能制度」が導入され、技能実習終了後に特定技能に切り替えて日本で働き続けるケースが増えてきています。
技能実習と特定技能という2つの制度の一本化を求める声もあり、同庁は2021年の秋以降に見直しの必要性について検討を行うとのことです。
少子高齢化で労働力確保がますます重要となるなか、国内外から批判が絶えない外国人受入れ制度をどう改善されるか注目されます。
当社の取組み
技能実習の取組み
当社の関連機関として「アシスト国際事業協同組合」があり、技能実習生を必要な企業に送り出しと管理を行っています。
・技能実習制度の採用を検討されている企業
・現在の監理団体(組合)に不満を持たれている企業
ご相談を承ります。
弊社のメンバーが理事と監事を務めています。
特定技能の取組み
当社は、特定技能制度の「登録支援機関」として、特定技能で働く外国人材と採用企業の各種の支援を行っています。
・特定技能人材の採用を検討されている企業
ご相談を承ります。
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