昨年12月に「出入国在留管理庁」から「2021年版出入国管理(白書)」が発行されています。
主な記事について数回に分けて紹介します。*今回は9回目
今回は、「不法残留者」と「退去強制手続きを行った入管法事件」の状況について紹介します。
なお、「不法就労の状況」は、次号で紹介します。
入管は不法残留者の情報を把握している
先日、在留資格の更新を支援した、ベトナムの高度人材(技術・人文知識・国際業務)の方から電話。
「先生、友達が大学を中退して、在留期限が切れるけど、どうしたら良いか?」と相談がありました。
対象の方は、「どうにかして日本に滞在したい」という気持ちを持っていることは理解できますが、法律を犯すわけにはいきません。
回答は一つしかありません。「管轄の出入国在留管理局(入管)へ出向いて事情を話し、相談すること」。この場合、帰国せざるを得ないかもしれませんが、在留期限の前に出向けば、法律を犯すまでには至りません。
法律を犯していなければ、日本に来られるチャンスはあります。
在留資格の更新を支援した方は、以前に、勤めていた会社が要因で在留資格の更新ができなくて帰国しましたが、早い段階で日本に来ることができました。
入管は、
・退学時点で、学校から情報の提供を受けている
・在留期限は当然把握している
・出国記録がないので、日本に滞在していることはわかる
よって、在留期限が切れたら、「不法滞在」になるので、本人を探す行動をとります。
いずれ、見つかり、強制出国になるので、その場合は、長期間日本に来ることができなくなります。
不法在留者の状況
外国人の就労者の増加、留学生の増加および観光目的の入国(短期滞在)の増加に伴って、不法に日本に在留している外国人数が増加しています。
*今回の集計は、2020年1月1日時点なので、新型コロナウィルス感染拡大の影響は反映されていません。
国別・地域別の不法残留者数の推移 *ベトナムが最多
・ベトナムは、技能実習生、留学生が多いこともあり、不法在留者が多くなっています。技能実習生はさまざまな理由で失踪者になった者、留学生は退学になった者が、引き続き日本に在留しているためと推察しています。コロナ禍により、「特定活動(帰国困難)」で在留されている方が多くいるかと思いますが、今後、認められなくなる可能性が高く、これにより、不法滞在が増えることが予測されます。
・韓国、中国は、観光目的で日本に入り、帰国しないで日本に在留していることによるものが多い結果と思います。
在留資格別不法在留者数の推移
人数的には、観光等の目的で日本に入国し(短期滞在)、期限が来てもそのまま日本に在留している場合が「60%以上」を占めています。
技能実習生、留学生の増加により、これらに関係する不法在留者が増えています。
退去強制手続きが行われた入管法違反事件
入管法違反者は、2005年以降、減少の一途でしたが、近年、査証免除措置の実施等により、新規入国者が増加し、それに伴い不法在留者数も増加したことなどが一因となり、5年連続で増加しています。
退去強制事由別入管法違反事件の推移
退去強制事由別に見ると、不法残留「14,465人」(91.1%)が圧倒的に高い割合を占めています。
国・地域別入管法違反事件の推移
前述のように、コロナ禍の影響で帰国できない方へ「特定活動(帰国困難)」の在留資格を認めたことで、不法滞在が減り、これにより、入管法違反が減少しています。
現在(2022年5月)、日本への入国が緩和され、また、外国との航空便の運行数が増えてきています。これにより、特例により日本に在留することができる「特定活動(帰国困難)」が認められなくなる可能性があります。また、日本企業の人手不足により、不法滞在者を使う企業も出てくる可能性があります。そのため、今後、不法滞在が増える懸念があります。
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