今日は、外国人の日本での就職について、留学生目線で、興味深い記事を見つけたので、紹介したいと思います。
以下、本文
『外国人留学生がガッカリする日本の就職事情』(東洋経済ONLINE)加島 禎二
http://toyokeizai.net/articles/-/180542
「就職の面接で『いずれは母国に戻る』と回答したら不採用になると聞きました。せっかく日本で勉強したのだから、まずは日本で仕事してみようというのが素直な気持ちですが、正直に答えてはいけないのは変だと思います」
「日本で働きたいと思っても、大企業ならともかく、そもそも名前を知らない中小企業と出合うチャンスはほとんどありません」
「大学の留学課は生活や履修のことには相談に乗ってくれますが、就職のこととなると、まるで取り合ってくれません。『キャリアセンターに相談してください』と言われ、キャリアセンターに行ったら『留学課で相談してくれ』とたらい回しにあいました」
「工場や小売り・サービス業で働くために日本へ留学に来たワケではないのですが、就職できそうな企業はそれらばっかりです」
これは海外から日本へ学びに来ている外国人留学生の声です。彼ら、彼女らの多くが日本国内で就職をしようと思っても、さまざまなハードルに阻まれ、うまくいく人は多くありません。
留学生就労へのコンセンサスがない
日本政府は2008年に、当時14万人だった留学生を2020年をメドに30万人まで増やす「留学生30万人計画」を打ち出しました。首相官邸のウェブサイトによれば、同計画は、日本を世界により開かれた国とする「グローバル戦略」の一環だとしています。計画の実施から9年経ったいま、日本学生支援機構の高等教育機関などの外国人留学生在籍状況調査によれば、2016年5月1日現在の外国人留学生は23万9287人。8年で約10万人増えた計算です。
留学生を増やそうとしている背景には、彼ら、彼女らが人材として日本企業のグローバル化に貢献することへの期待があります。そのためには、優秀な外国人留学生を呼び込み、高等教育を授け、卒業後は日本で就労してもらうことが必要になります。
日本で学ぶ外国人留学生の多くが、卒業後も日本で働くことを希望しています。日本での就職希望者は、博士課程で56%、学部卒で70%に及びます。にもかかわらず、実際に日本で就職するのは、博士課程では18%、学部卒で30%ほどにとどまります(日本学生支援機構「外国人留学生在籍状況調査結果」より)。
外国人留学生が日本企業へ就職するには、いくつもの壁があるのです。
年齢制限や外国人に対する偏見も…
まずは、企業側の採用に対するスタンスやマインドです。たとえば、依然として「外国人=低賃金労働者」と考える企業が多く、留学生の就職先の業種には大きな偏りがあります。最も多い業種は、小売業・サービス業。しかも、当たり前ですが、入社後数年は間違いなく、現場配属です。
ただ、自国で高等教育を受けた人材や、日本で上位大学に入る力のある人材が、忙しいオペレーションの毎日を過ごし続けると、どうなるでしょうか。わざわざなじんだ自国を離れて、外国語を習得し、日本でビジネスをしてキャリアを築いていこうという気持ちが、だんだん萎えていってしまいます。特に大都市ではまだしも、地方の拠点の職場では、外国人はまだまだ「出稼ぎ労働者」のような見方をされてしまいがちです。そんな毎日が続くと、「私はなんのために日本まで来たのだろうか」と悩み、他国に行ったり、自国に戻っていってしまうのです。
日本人と同等か、それ以上の優秀な海外人材が大勢いることに気づいていない日本企業が少なくないのです。これは単なる偏見であり、認識不足としかいいようがありません。終身雇用が大前提であるため、面接で「将来は帰国したい」と言うと、不採用になることも多々あると聞きます。その「将来」が数年後などではなく、もっと遠い将来かもしれないにもかかわらずです。
海外では、いったん社会に出て学費を稼いでから大学院へ戻るケースが多々あります。その人が日本の大学院へ留学し、日本企業で就職しようとした場合、就業経験が認められず、しかも新卒としての年齢制限があり、書類選考の段階で落ちることもあるというのもしばしば耳にする話です。
日本で働くことを希望しているにもかかわらず、「留学生向けの就職情報が少ない」という問題もあります。留学生たちによれば、なかでも中小企業の情報は非常に少ないそうです。実際には人材不足に悩んでいる中小企業は少なくないはずなのに、チグハグに感じます。
大学などでの就職支援も少なからず問題を抱えています。留学生が多い大学でも、留学生専門キャリア支援の担当者は人数が限られているため、思うように相談ができないのが現実だといいます。そのため、留学生同士の支援組織である「留学生会」が中心になって、企業に働きかけをし、就職セミナーなどを開催したりして努力をしているのですが、そこに参加するのは、中国をはじめとする海外の企業であることも少なくありません。
優秀なのに日本語ができず、就職をあきらめるケースも
「日本語の壁」も大きな問題です。新卒採用では、「SPI総合検査」のような適性検査を実施している企業が多々あります。日常生活上の日本語には不自由せず、かつ入社後にも活躍が期待できそうな留学生が、SPIではじかれるケースが多々あるのです。これはあまりに残念だといわざるをえないでしょう。
企業が日本語能力を重視せざるをえない理由は、「会話力ではなく、資料の作成や稟議書の作成で苦労するから」とある大手メーカーの採用担当者は明かします。もともと、日本人の学生であっても、ビジネスの資料を作成したり、ましてや稟議書を書けるようになったりするには、数年間の勉強と実務経験が必要になります。留学生の日本語能力の問題は、入社後の研修や職場トレーニングで対応できるはずなのですが、それが「面倒だ」と思う企業側の事情があるのです。
英語による授業で学位を取得できる大学のプログラムも考えものかもしれません。留学生のなかには「日本語を勉強して、日本人と同じように競争して日本の企業に入りたい」と考える人たちも多くいますが、指導教官から、「あなたは日本語を勉強しにきたわけではない。もっと自分の研究テーマに集中してください」と指導されるケースが多いようです。特に大学院に顕著だと聞きます。
必要最低限の日本語しか身に付けていないために、就職試験に通らない優秀な人材も少なからず存在します。あるいは最初から「どうせ就職のチャンスはない」とあきらめてしまい、帰国したり、欧米やアジア他国などに就職先を求めたりするケースもあります。
日本では、大学も企業も政府も、「留学生は日本に一定期間いるが、勉強が終わったら帰国する」ことを前提にしているというふうに見えます。日本人が海外留学する場合、そのまま現地に住み続けるケースが少ないからかもしれません。
一方、日本に来る外国人留学生のなかには、私費ではなく国費や、あるいは日本政府が貸与するおカネで勉強している人も少なくありません。見方を変えれば、多額の税金を使って育てた優秀な人材を、みすみす海外に流出させているようなものです。
「留学生30万人計画」の目的が、留学生に高度外国人材として日本企業のグローバル化に貢献してもらうことにあるなら、日本に住み続けて、働き、日本の経済や社会に貢献してもらったほうが、より合理的といえるでしょう。そもそも「日本が好き」で来日している人たちを活かさないのは残念です。何のために外国人留学生を増やしているのか。今は日本にとって「宝の持ち腐れ」。何とももったいない状況にあるのです。
本文は以上。
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